「たまたまの奇跡を楽しもう」

今日は、普段朝に聴いているラジオで知った一冊の本をご紹介したいと思います。それは、平野啓一郎の短編集『富士山』に収められている『息吹』という作品です。私は普段、参考書以外の本はおろか文学作品などほとんど読まないのですが、ラジオの中で、この本が紹介されていて、偶然その内容が心に残り、読んでみたところ面白く、短編集なので短い時間でも読みやすい作品でしたので、今回皆さんにシェアしようと思いました。

5編のなかで一番好きだったのが『息吹』という作品です。主人公の齋藤息吹(さいとう・いぶき)が入ろうとしたかき氷屋さんが満席だったため、たまたま入ったマクドナルドで、隣の席から『大腸の内視鏡検査が……』みたいな話を耳にして、それから思い立って、自分も何となく検査を受けてみたら幸運にも初期の大腸がんが発見されるというストーリーなのですが、別の世界線では、息吹はちゃんとかき氷屋さんに入れてかき氷を食べたので、大腸検査の話は耳にせずに検査もしなくてがんに気付かなかったという、パラレルワールド的なもうひとつの世界線の自分というのもいて、たまたま○○じゃなかった世界の自分というものに対して、得も言われぬ展開が待ち受けるというお話です。

5編全てに共通しているテーマが“偶然性”です。人生って本当にたまたまそこに行った、たまたま出会った人と話したなどの偶然が影響することってすごく多いと思います。

今の時代、ネットで簡単にほとんどの物が買えて、AIに頼めば無数の情報から最適化された答えを聞くことができますが、本屋で何気なく手に取った本が人生を変えたり、面と向かって話してみたら意外な気づきを得られたり、そういう素晴らしい偶然を体験する機会って減っていると思うのですが、この本はそういった偶然に対する感受性を取り戻せたり、豊かにしてくれると思いました。

私自身も、現在やまもと事務所で働けているのも、まさに偶然の積み重ねがあったからだと思います。約1年前、求職活動を始めた時期にたまたま、やまもと事務所の求人が出ていて、しかも通勤しやすい場所にあったことが決め手となり、応募しました。そうした偶然が重なって今の仕事に出会えたと思うと、人生の選択は本当に偶然とタイミングで大きく変わるものだと感じます。

そう考えると、人生は「たまたま」の積み重ねなのかなと思います。もしもあの時こうしていたら、と振り返ることもありますが、そんなことを考えているうちに、また次の「たまたま」がやってきて、あっという間に新しい方向に進んでいたりします。だからこそ、偶然の出来事や予期しないチャンスを楽しむ気持ちが大切だと思います。

何が起きるか分からないからこそ、毎日がワクワクするのだと思いますし、予測できない出来事があるから、仕事も面白くなるし、もっと成長できるのだと思います。

これからも、たまたまの奇跡を楽しんで、どんな状況でも前向きにチャレンジし続けていけたらいいなと思います。